高等学校において地学の履修者の減少が問題になってすでに久しい.年度ごとの教科書採択数から推定れされる「地学」履修生徒の割合は,理科4科目の合計に対する比で表すと,近年6%台(「地 学TA+TB+U」)へと落ち込んでおり,理科4科目中における「地学」の比重は年々下降している.このような状態が続くと,一般市民の地学リテラシーが衰退していくだ けではなく,将来の地学関連分野の発展にも影響を与えかねない.
 高等学校では理科で地学を履修する生徒が減少しているために,地学関連の学部・学科出身の教諭が「地学」以外の科目を教えている.また,「地学」を専門とする教諭が不在のため地学を開講していない高等学校も多いのが現状である.現在は高等学校の理科の新規採用教員は少ないが,その中でも「地学」を専門とする教員採用は少なく,そのため地学専門の若手教員は非常に少ない.このような現状が続くと,「地学」という科目が学校教育からなくなることも考えられる.2003年度から始まる新教育課程で地学の内容が多く含まれる「総合理科B」が開設されるが,すべての学校で必ずしも開講されるわけではない.
 一方,2003年度からITリテラシーを高めることを目的に,高校学校で「情報」という科目が必修科目となる.2003年度から高校に入学する生徒は,卒業までの3年間で1科目合計2単位取る必要がある.「情報A」「情報B」「情報C」の3科目から1つ以上を選択する.「情報A」はパソコンとインターネットの活用の習得を目的とし,生徒のITリテラシーの平準化をめざしている.「情報A」の構成は@問題解決の手段としてのIT利用,Aインターネットの活用と情報発信,Bマルチメディアの活用,CIT発達の歴史と今後のその影響についてである.「情報B」はコンピュータの機能や技術的部分の科学的な理解について,「情報C」はインターネットの社会における利用や影響・著作権について学ぶ.
 教育界では「教育の情報化」を推進することが強調されている.「教育の情報化」の一つの要素は子どもたちの問題解決能力を育てるために,子どもたちの情報活用能力を育成する情報教育であり,その中にコンピュータの活用が含まれる.二つ目の要素は,各教科の授業でのIT活用である.
 天文学,気象学,地震学,地質学など「地学」に関連する学問領域では多くのデジタルデータが扱われている.そこで,高等学校での地学の学習内容に関連するデータをITを活用しながらデータ処理を行い,地学の内容を理解するとともに,あわせて「情報A」が目指すような情報活用技術も習得できると考えられる.ここでは,「情報地学」という名目で,そのようなことをめざすカリキュラムの検討とそれに関連するいくつかの開発教材について報告する.このことが高等学校での「地学」教育の活性化するための一手段として発展することを期待したい.(2003年3月)

高等学校での地学教育の現状(2016年3月)

デジタル地学  −地学を学校教育に−